1対n結合の場合、JOINとは正規化データから非正規化データを作り出す操作になる
RDBのテーブルは、きちんと設計されていれば、正規化されています。つまりデータに重複がなく容量の面で効率的になっています。ここで正規化データとはあくまでもRDBにとって効率的というだけでそれ以上のものではありません。一方で人間が理解しやすいデータ形式は必ずしも正規化データというわけではなく、往々にして非正規化されたデータの場合があります。JOINを行うということは正規化されたデータを非正規化データに戻す操作ということに相当します。つまり、効率のよいデータから人間にとって理解しやすいデータ形式に戻す操作になります。JOINは正規化されたデータから非正規化という効率の悪いデータ形式に変換する操作になります。
SQLでJOINを行い、その結果を取得するということは何らかの非効率な行為が行われているということがわかるかと思います。
RDBのコピーを行おうと考えた場合、わざわざJOINなどせずに、テーブル毎にコピーを行おうとするでしょう。RDBからデータを取り出すとき同様に正規化された単位でデータを取得した方が有利な場合があるということは理解できるかと思います。
RDBでは正規化データから非正規化データを作り出す方が非正規化データから正規化データを取り出すより効率的
先ほど、JOINは非効率といいましたが、なぜRDBでは効率の悪いJOINが行われるのでしょうか?理由は簡単で、RDBの理論では、
・非正規データ から 正規データ を作る
操作より
・正規データ から 非正規データ を作る
操作の方が効率的と考えられているからです。非正規データから正規データを得るにはグループ化を行います。つまりGROUP BYを行う必要がありますがこれはつまりソートを行った上に重複したデータを圧縮することに相当します。一方でJOINはデータの検索に相当します。例外はありますが検索の方がソート&圧縮より効率的なのは理解できるでしょう。
さらに、正規化データは非正規化データより更新が容易ということもあります。
つまり、関係データベースの世界では正規化されたデータは非正規化されたデータより効率がよいと考えられています。ちなみに、この認識が間違って拡大解釈され、『SQLは効率がよい』という誤解が生まれたと想像されます。
1対nの結合で一方のレコードサイズが小さいとき、2つのテーブル間の単純なJOINは効率的、だがデータの出力が非効率
FROM table_a INNOR JOIN table_b ON (table_a.table_b_ID = table_b.ID)のSQLがあるときに、
table_aがマスターを参照するテーブルで、table_bがマスターテーブルと仮定します。つまりtalbe_aとtable_bが1対nで結合されており、さらにtable_bがメモリに入る場合、JOIN自体のコストはほとんどかかりません。
2011年現在、サーバーに搭載されるメモリ容量が数十GBのオーダーになります。一方でマスターテーブルの容量は多く見積もっても数百万件のオーダーになり、各データを多く見積もって1KBとしてもマスターテーブルのデータ容量は数GBのオーダーとなります。実際にはJOINに必要なデータのみメモリにおいた場合、必要なデータは1桁も2桁も減ることになります。結果として1対nの結合ではほどんどの場合、マスターテーブル側はメモリに乗ることになり、JOINにおいてマスター表の操作は高速に行えます。
しかし、1対nの結合では、結果を取得する場合に、結果データが非正規になる為に非効率になります。
この場合、JOINを分割して、呼び出し言語側でJOINした方が理論的には効率的になります。実際どこまで効率的になるかは分割による複数回のSQLの呼び出しのオーバヘッドと繰り返しデータの量に左右されます。
1対1結合の場合は、JOINは出力も含めて効率的になる
1対1結合の場合は、結果データも正規化しているのでJOINは効率的になります。JOIN自体が効率的に行えるかどうかはデータ量やデータ(または結合キーのインデックス)が整列されているかどうかによります。結論
以上のように、扱うデータの性質によってSQLでJOINさせる方がよい場合とSQLではJOINさせない場合の方が理論的に速くなる例を示しました。結合の種類が1対nの場合、JOINを行うとデータ非正規化し、容量が増えるので出来るだけJOINを遅らせるテクニックが有効になる場合があります。
実際にどのような状況のときにJOINを遅らせたほうがよいかですが、マシンのスペック、ネットワークの環境等に依存しますが、傾向として行数が増えた場合や1対nのJOINの数が増えるとJOINを遅らせる方が有利になります。このような場合でパフォーマンスに問題が発生した場合にJOINを遅らせるテクニックを検討されると上手くいく可能性が高まります。
一方で、結合の種類が1対1の場合、データは非正規化しないので、SQLの発行の段階でJOINを行えば有利になります(JOIN自体のコストはまた別の話になります)。